WorkPal – AIミーティングアシスタント

WorkPalは、対面ミーティングに特化した小規模ビジネス向けのAI搭載ノート作成アプリです。会議をリアルタイムで録音・文字起こしし、自動的に議事録やタスクリストを生成します。ユーザーはメモ取りに追われることなく議論に集中でき、終了後は要点が整理されたノートとアクションアイテムを共有可能です。情報の抜け漏れを防ぎ、会議の質と業務効率を向上させる会議支援ツールです。

チーム

エンジニア:4名、 UX/UIデザイナー:5名(本人含む)

使用ツール

Figma, Illustrator, Indesign, After Effect, Premiere Pro, Slack

期間

2023/01 - 2023/04 (15週間)

タグ

モバイルアプリ、b2b

プロジェクト概要​

このプロジェクトは、チーム課題としてB2B向けのニーズを仮定し、実際の業務を想定して要件定義やユーザーテストも含めて構成したものです。
特に少人数チームや中小企業で発生する会議運営の非効率を解消することを目的に、ユーザーヒアリングでニーズを把握し、機能定義、要件策定、ユーザー調査、プロトタイピング、UIデザインまでを一貫して担当しました。
対面ミーティング中でもリアルタイムで情報を記録・整理できるUXを設計し、AIによる音声認識と要点抽出を活用した、誰でも直感的に使えるシンプルなUIを目指しました。

課題

多くの中小企業では、会議中の議事録作成やタスクの管理が属人的に行われており、重要な内容の記録漏れや対応漏れが発生することが課題となっていました。特に対面形式のミーティングでは、ホワイトボードや手書きのメモに頼る場面も多く、情報共有や業務への反映が遅れる傾向にあります。また、業務が多忙な中で議事録作成に時間を割くのが難しく、会議の効率化や負担軽減を求める声が高まっていました。AIの導入により、こうした煩雑な作業を自動化し、ユーザーが本来の議論や意思決定に集中できる環境を整える必要がありました。

ゴール

対面ミーティングにおける記録・整理・共有の業務をAIで支援し、会議の質と効率を高めるアプリケーションを提供すること。誰でも簡単に使えるユーザー体験を重視しながら、記録の抜けやタスクの見落としを防ぐ仕組みを実現することを目指しました。

ソリューション

WorkPalは、以下の主な機能を通じて、ユーザーが本来注力すべきタスクに集中できる環境を提供します。

ミーティングの予定を簡単に設定でき、参加者全員に事前通知を自動送信します。スケジュールの抜けや認識違いを防ぎ、会議準備をスムーズにします。

AIが会議中の音声をリアルタイムで録音・文字起こしします。メモを取る手間がなくなり、参加者は会話や意思決定に集中することができます。

録音された音声データから、AIが重要なトピックや要点を自動的に抽出し、わかりやすく整理された議事録を生成します。

議論の中で発生した実行タスクをAIが検出し、タスクリストとして自動でまとめます。JIRAなどの外部ツールへのエクスポートも可能で、業務への即時反映が行えます。

過去のミーティング内容に関して質問すると、AIが即座に該当部分を検索・回答します。会議内容の振り返りや確認を効率的に行えます。

デザインプロセス

ユーザーインタビュー

ターゲットユーザーを深く理解するために、さまざまな業界の専門家27名にインタビューを実施しました。その結果、特にスピード感のある環境で働く人々は、会議の内容を明確に記憶しておくことが難しいという課題が浮き彫りになりました。

以下は、インタビュー参加者の声の一例です。

「IT業界は本質的にスピードが速いため、会議で得たすべてのフィードバックを追いきれないことが多いです。」

「会議中に話についていくだけで精一杯で、重要なポイントをメモしきれないことがよくあります。」

ユーザーの課題

注意が散漫になりやすく、重要な内容を見逃してしまう。

多くの人が経験するように、議論中にメモを取るのが難しく、会議での重要なポイントを見落としがちです。 

スケジュール調整やタスク割り振りに多くの時間を費やす。 

多くの企業は生産性向上のためにカレンダーやタスク管理ツールなど複数のアプリを使っていますが、それらが連携していないことでかえって作業が中断されることもあります。 

競合他社分析

北米市場における主要な競合サービスを調査し、各ツールの特徴や強みを整理しました。以下に代表的な競合プロダクト名と機能の概要をまとめました。

ペルソナ

メインターゲット層の年齢や役職が異なる「若手社員」と「管理者」の2名のペルソナを作成し、ユーザーごとのニーズや課題の違いを明確化しました。これにより、サービス設計において幅広い利用シーンや体験価値を考慮できるようにしています。

リーンキャンバ

これまでのリサーチで得たユーザー課題や市場ニーズ、プロジェクト要件を整理し、ビジネス視点からも価値提案や課題を俯瞰できるようリーンキャンバスにまとめました。これにより、チームメンバー間でもプロジェクトの方向性や優先順位を共有しやすくなり、実現性とユーザー価値の両立を意識したUX設計につなげています。

サイトマップ

本アプリでは、ユーザーが直感的に操作できるよう、5つのグローバルナビゲーション(会議のスケジューリング、会議のレコーディング、録音履歴の閲覧、社内メンバーのコンタクトリスト、設定)を画面下部に配置し、主要な機能にワンタップでアクセスできる構成としました。これにより、モバイル環境でも迷わず素早く目的の機能にたどり着けるユーザー体験を実現しています。

ユーザーフロー

ユーザーがアプリ内でどのように操作を進め、目的を達成するかの一連の流れと、各機能がどのように連携しているかを視覚化しました。これにより、ユーザー体験全体と主要なタッチポイントを把握できるようにしています。

スケッチ

事前に整理したユーザーフローをもとに、チームでホワイトボードにスケッチを描きながら、主要画面とインタラクションを可視化しました。

ワイヤーフレーム

本フェーズでは、会議内容の録音から要約の生成、要約データの確認およびJIRA(プロジェクト管理ツール)へのインポートまでの一連の業務フローを設計しました。また、実装を見据えてエンジニアチームと連携し、音声データ処理や外部連携機能がスムーズに実装できるよう、技術的なフィードバックも取り入れた構成としています。

ブランディング

ブランディングでは、「High-tech」「Minimalist」「Professional」「Innovative」「Friendly」のキーワードを軸に、ロゴ・カラーパレット・タイプフェイス・UIキットを構成しました。ターゲットは、機能性と親しみやすさを求める若手の個人事業主や小規模IT企業です。

ロゴの“W”はWorkPalの頭文字であり、音声録音中の波形をモチーフにしています。ウルトラマリンブルー(主色)はWを際立たせ、カリビアングリーン(副色)はアクティブな操作やポジティブな結果を示します。

書体は視認性重視のCarbona Testと、アシスタント用に親しみやすいCaveatを使用。UIキットはフラットで現代的なスタイルです。

録音ボタンを主ボタンとして明確に強調し、角丸のデュオトーンアイコンで統一感を出しています。ブランド差別化とUX向上のため、アシスタントキャラクターRobotPalも導入しました。

モックアップ

WorkPalのモックアップでは、ユーザーフローやペルソナに基づいて設計した画面を視覚的に具体化しました。中小企業の少人数チームを主な対象とし、会議中のストレスや操作の煩雑さを感じさせないよう、シンプルで直感的なインターフェースを目指しています。また、本プロジェクトでは、外部のUIフレームワークを使用せず、すべてのデザインコンポーネントをゼロから設計しました。それにより、柔軟性のある設計とWorkPalならではのブランド体験を両立させています。

ユーザーテスト

オフィスでの就業経験のある計3名のクラスメイトにご協力いただき、大画面で画面を共有してもらいながら、対面形式でユーザーテストを実施しました。ミーティングのスケジューリング、録音、内容確認・編集、そしてタスクをJiraにエクスポートするまでの一連の操作に取り組んでもらい、操作中の様子やフィードバックを観察・記録しました。以下は、主なユーザーテストの結果と、それに基づいて行った改善内容です。

イテレーション①

ゴール

初見でもスムーズにミーティングの登録をできるか確認するため。

フィードバック

  • ストップボタンに誤って触れてしまい、不意に録音が終了してしまいそうになる。
  • ストップボタンを押すと即座に次のページへ遷移し、驚いた。

ソリューション

  • ストップボタンを押した際に、録音を停止してよいか確認するメッセージを表示する仕様に変更。
    → 意図しない操作を防ぎ、ユーザーに安心感を与える設計とした。

イテレーション②

ゴール

録音・文字起こしされたスクリプトを確認・編集する操作が、初見でもスムーズに行えるか確認するため。

フィードバック

  • undo・redoボタンの意味が分かりづらく、ブラウザの戻るボタンと混同してしまった。
  • ページ全体が情報過多で、ごちゃごちゃして見える。

ソリューション

  • 使用頻度の低い redo ボタンは削除し、undo アイコンはより直感的で他のアイコンともスタイルを統一したデザインへ変更。
    →アイコンの意味が明確になり、全体のデザインも整理されたことで、視認性と操作性が向上した。

ファイナルプロトタイプ

このプロトタイプでは、会議のスケジューリングから録音、文字起こし、議事録とタスクの生成に至るまで、ユーザーがWorkPalを通じて体験する一連の操作フローを確認できます。特に、アクションアイテムの明確な提示や「ミーティングスケジュール → ミーティング内容録音 → 録音終了 → 議事録閲覧 → タスク確認」といったフロー全体のスムーズな接続に重点を置き、ユーザーが迷わず次のステップに進めるよう設計しました。

※クリックすると音が出ます。音量にご注意ください。

振り返り

複数のデザイナーと協働する中で、意見がぶつかる場面も多くありました。そのため、デザインには常に理由を持たせ、相手に伝えながら進めていく姿勢の重要性を改めて実感しました。また、ユーザーフローの設計段階で、1つの画面に対して複数のシナリオが想定される場合は、それを早い段階で洗い出しておくことで、完成後に機能を追加する必要がなくなり、設計の精度と効率の両面でメリットがあると感じました。今後は、初期設計の段階からチーム内での共通認識を丁寧に築き、仕様の抜けや誤解が発生しにくい形で情報を整理・共有することを意識して取り組んでいきたいです。